例年4月21日大法寺において大般若会が奉修されております。三重塔近くの観音堂、本尊十一面観音菩薩様の御前にて、10名以上の天台僧により大般若波羅蜜多経六百巻が転読されます。終了後は国指定重要文化財の十一面観音様の無料御開帳、大般若会札および記念御朱印の頒布が行われるとともに、智慧団子や甘茶が振る舞われます。
大般若会とは、大般若波羅密多経を転読することにより、無病息災、五穀豊穣、国家安泰など諸々の願いの成就を祈る会であります。特に大法寺では、本尊の十一面観音菩薩様が諸々の願いを叶える諸願成就の観音様であることから、交通安全、商売繁盛、無病息災、恋愛成就、学業成就など、多種多様な願いを祈る場となっております。大法寺十一面観音菩薩様は、もとより現存する仏像としては東信地域では最も古い仏像でもあり、その功力にあやかることができる大変貴重な機会であります。
大般若波羅密多経の読誦は「転読」という通常とは異なる方法によりお経が読まれます。10名以上の上田市周辺の天台宗寺院の住職により行われる転読は、仏式法要としては大変優雅なものであります。転読される大般若波羅密多経は、「西遊記」のモデルとなった三蔵法師玄奘によって、インドより中国にもたらされた経典であり、世界で最も長い経典とされております。大般若波羅密多経には、「空」の教えの重要性が書かれており、物事にとらわれない心の持ちようが、悟りにつながると説かれております。
我が国最初の大般若会は、1,300年以上の昔大宝3年(703年)に文武天皇の命によりおこなわれました。大法寺はこの大宝年間に「大宝寺」として創建され、その後現在の「大法寺」になったとされております。